最高裁判所第一小法廷 昭和32年(オ)769号 判決 1959年7月30日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中間保定、同坂本寿郎の上告理由第一点について。
原審の判示したところによれば、「本件家屋の階下部分は床面積約五坪であるが、被上告人(被控訴人)が昭和二〇年一月高松春雄に対し貸与した当時から現在に至るまで店舗として使用しうる構造を有し、これを右高松は小鉢物料理業の、又上告人(控訴人)はゴム用品販売業の各店舗として使用していたことが認められるので、右階下部分だけを階上部分とは別個に店舗の用に供することは相当な利用方法となすべく、これを独立して賃貸するにおいては、地代家賃統制令の適用なきことが、同令第二三条第二項第三号により明らかである」というのであり、右原審の認定判断は、挙示の証拠に照らしこれを是認することができる。してみれば、原審は所論のように、被上告人(被控訴人)が従前より右階下部分を含めて本件家屋全体を高松春雄に対し所謂併用住宅として賃借せしめていたとの事実は何ら認定しておらず、所論は原審の認定していない事実関係を前提とする主張であつて、この点において失当であるばかりでなく、前記原審の認定した事実関係の下においては、原審が本件損害金を上告人(控訴人)と高松との間の約定賃料額を標準として算定したことは正当であつて、所論の違法は認められない。
同第二点について。
損害額の算定は必ずしも鑑定の結果をまたなければならないものではなく、原審の認定した事実関係の下においては、原審が本件損害金の算定につき所論の約定賃料額を標準としたことに所論の違法は認められない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)